2018/09/21
フランス企業パティスリー部門にてキャリアをスタート。都内パティスリー勤務を経て、レコールバンタンにて製菓アシスタント講師や八王子うかい亭のパティシエを勤め、現在は学校法人東京観光学校のカフェサービス学科にて、製菓、カフェフード、デザートの実習をはじめ、メニュー開発や店舗経営などの教育を行う山本佳成さんにお話を伺いました。
>>山本佳成さんの連載コラム「人気のカフェ業界で即戦力として活躍するために「東京観光専門学校・カフェサービス学科」で学べる事」はこちら
学生時代は特にパティシエになりたいといった具体的な夢はなく、当時はずっと音楽活動をしていましたので、音楽で生活したいと思っていました。就職を考え始めたのも私のレベルの音楽では食べていけないと気付いた時なんです。
飲食業界(パティシエ)を仕事として選んだ理由としては、大学の時に国際学を学んでいたことも理由の一つとしてありまして。どうせなら、戦争とは全く関係のない幸せな事を仕事にしたいというのが根本にはありました。あとは、ケーキの構成も音楽の流れにも似ていて、面白みを感じたというのもあります。
本格的にパティシエをやりたいと思ったのは、実際に仕事をしてみてからというのはありますが、一生追及できない世界にどんどんのめり込んでいって、これを仕事にしたいと思いました。
本当は学校にも通いたかったのですが、私が始めた頃同級生はケーキを学び始めてもう4年経っていたんですね。その遅れを埋めるためには、すぐ現場に入るしかないと思い、実践から始めました。
最初の職場は、今は撤退して日本にはない「カルフール」というフランス初のスーパーマーケットチェーンのベーカリーチームに入ったのですが、初日にいきなりクリームを絞らされたりと混乱したのを覚えています。
同級生との差を埋めないといけないというのと、何もできない今の状況を打破するためにも、給料はいらないので勉強させてくださいと別のお店に頼み込んで、夜は2件程掛け持ちで働いていました。それぐらいやらないと嫌だったんです。周りの同級生や年下のほうが、自分よりも仕事ができたり、美味しいものが作れたりすると悔しかったので。
さらに「カルフール」では、フランス人の店長にオーストラリア人のベーカリーのマネージャーという環境で仕事をしていたので、フランスから指示が来るし、レシピは英語でしたし大変でした。ただ、フランス文化を学びながらフランス菓子を作るという、本場に近い環境で仕事が出来たことはすごくいい経験だったと思っています。私の師匠となる人で、日本人のベーカリーヘッドもいたので、何かあれば教えていただけるいい環境でした。7年間勤めて、最終的にはその部門を任されるまでになりました。
「カルフール」を退職した後に、バリスタとブーランジェと私でカフェを3年程経営していました。そのタイミングで、レコールバンタンという専門学校で鍋田幸宏さんという日本を代表するパティシエのアシスタント募集があり、講師のアシスタントのお仕事をさせていただくことになりました。そこでの経験はかなり貴重で、様々なことを勉強させていただき、講師の仕事をしようと思うきっかけともなりました。
その後、「うかい亭」というレストランでパティシエを強化するというお話があり、これまでケーキしか作ってこなかったのですが、レストランのデセールと呼ばれるものを勉強したかったというのもあり、2年程勤めました。
どの業界もそうだと思うのですが、パティシエも厳しい世界なんですね。パティシエを夢見て専門学校で勉強をして、ずっと入りたかった製菓業界に入るまではいいのですが、学生から急に入ってくる世界だと、すごいギャップがあるんでしょうね。続かない子も多くて。そういうのを見ていくと、製菓を教えるとか、良さを伝えると同時に、社会に適応できるような発想力や柔軟性、コミュニケーション能力、アウトプットする力などを教えていくのがいいと思い、講師の仕事を始めました。
せっかく夢を見ていい印象のまま製菓業界に入ってきたのに、すぐに壁に当たって辞めてしまうとなると、もしかしたらすごく才能を持っている子かもしれないし、今後自分たちの仕事を受け継いでくれる子たちなので、その子たちを残さなければ製菓業界も進化していかないとも思いました。
ケーキ屋やレストランは、お客様から見るとすごく華やかだとは思うのですが、厨房内では、ずっと手元の作業や生地を回したりと、体力を使う仕事になります。また、働くお店によって違いますが、作業工程を分担して行うパティスリーが多いため、自分の仕事を早くしないと次の人の仕事が進まないという状況があり、とにかく追われているような状況です。自分一人で出来ない仕事のほうが多く、チーム力も必要になります。
例えば、ケーキ屋ですと、お誕生日ケーキやウェディングケーキの提案などです。
お客様にとって一生に一度の記念となるケーキなので、絶対に写真も撮られますし、その写真をこの先何年も見られると思うんです。
お客様の要望に応えるためにも、なるべく希望通りにイメージしたものをくみ取らないといけないので、パティシエのサービス力というのは、お客様が本当に何を求めていて、どういう環境にいて、どういうものを求められているかというのをいかに感じ取れ、再現できるかということになります。お客様の気持ちとか味覚の好みまで分からないといけないので、サービスの中でも特に難しいことなんですね。
だからこそ、最初のヒアリングの段階で、どれだけお客様の気持ちを引き出せるかが大事になってくるんです。
たまに意図していないところでお客様の心にヒットすることがたまにあるんです。その時はすごく気持ちいいですね。自分が100%これがほしいんだろうなというのが分かって響くのが一番いいんですけど、それはなかなか難しいですね。
逆にがっかりさせてしまう危険性ももちろん多いと思いますが、それを極力避けるためにも、サービス力を極めることによってお客様を本当に感動させることが出来る仕事なんです。
東京観光専門学校のカフェサービス学科は「バリスタ専攻」「パティシエ専攻」「カフェビジネス専攻」の3つの専攻に分かれています。
「バリスタ専攻」はコーヒーを中心にオリジナルドリンクを作成したり、バリスタは仕事としてもお店に立つことが多く、サービス力がもちろん必要になってきますので、サービススキル等も学んでいく専攻になります。
「パティシエ専攻」は、基本的にお菓子の作り方を一から学んでいく専攻なのですが、これまでお話しした通り、それ以前にお客様のニーズに合わせたものが作れないといけないといけないので、単に作り方の手順を教えていくだけではなくて、自分たちが作ったものをどうやってお客様にアプローチしていけばいいのか、どういうものを作ればお客様が感動するか等を勉強していく専攻になります。
「カフェビジネス専攻」はバリスタとパティシエ両方を一緒に学んでいくのですが、コーヒー、デザート、洋菓子の実習等から好きな実習を選ぶことが出来るようになっています。
1年次は基本的に実習でも基礎的な事や、ビジネスマナー等の社会人になるためのスキルを学びながら、インターシップ(現場研修)を2か月間経験します。
2年次になるとほとんどが実習になるのですが、店舗販売実習という、自分たちが考えたものを校内で売るといった実習もしています。
教室をお店にして、バリスタがドリンク、パティシエがお菓子を考えて、学生達で販売を行うのですが、先ほど話したように作り方を知ってても、どうやって作るのか、何個作るのか、学生が何人いて、どういうものが求められているかなどを考えていかないと全く売れないんです。
学生も素直なので、美味しくなさそうとか、金額がマッチしてないとか言って、魅力的なものでないと買わないです。私もだいぶ売れるものと売れないものの特徴が見えてきました。学生にはそれを勉強させたいので、答えは最初は教えないようにしています。
ルールは特にないので、とりあえず小さいケーキを串に刺してみようとか、物凄く大きなエクレアを売ろうとか、面白い発想をしてくる生徒もいて見ている私も楽しいです。
店舗販売実習は週2回授業をしていて、2年生になりたての4月5月はそれに追われてしまうのですが、だんだん慣れてくるとみんな余裕が出てくるんです。社会に出るとそれが毎日なので、即戦力として活躍できるように今のうちに頑張ってもらっています。
教室を自由に開放しているので、私のいる時間を合わせていつでも練習が出来るようにしていることや、製菓学校とかと比べると、ケーキだけを触っている時間は少なくなるのですが、サービスの授業にも力を入れているということも一つの特徴です。
企業とのコラボレーションにも取り組んでいて、三越の「はじまりのカフェ」というお店を学生たちと運営したりもしています。
他にも安達学園のAO2.5という高校3年生のプレスクールを始めていて、月1回授業をしています。一緒に入学する友達や先生との距離感もそこで縮めていただいたり、入学までにある程度の知識をつけてもらい、4月からスタートしやすい状況を作るという取り組みもしています。今年入学した生徒達は4月から物凄いペースで練習しているので、こうなると就職なども早いと思いますし良いと思っています。
あとは生徒数も私一人でも見きれる人数なので、一人一人に対しての距離感がすごく近く、分からないことを分かるまで教えることが出来ますし、柔軟に対応できることは学生にとっては良いことだと思っています。
誰しもがいい部分も悪い部分も必ず持っています。自分自身を理解させて、一人一人の良いところを出来るだけ伸ばしてあげたいと思っています。あとはチーム力です。パティシエの仕事は、環境的にもチームで動いていかないといけないので、人間関係のこじれなどはケーキ屋等では一番よくないことです。コミュニケーションを取ることに関しては大事にしています。
一番心がけていることは楽しくやることですね。楽しくしないと絶対に美味しいものはできないです。イライラしたときに作ったケーキの味は尖っていたり、モチベーションが低いときに作ったケーキはゆるかったりします。ケーキは嘘つかないです。自分の心境を映してくれると思っています。
パティシエの種類にもよりますが、やはりのめり込める人には合っていると思います。逆にコミュニケーション力が高い人はチームで戦えますし、仕事がすごく速いです。なので、自分に合った職場を選択することがいいと思っています。
それこそ高校生の頃から生徒の事は知っていて、2年間一緒に過ごしていくので、この生徒にはこういう仕事が合っているなど分かる環境にもあります。私も就職まで見たいという気持ちがありますし、話し合いながら生徒に一番合っている企業やお店を探してあげれるようサポートしています。
今は世の中にケーキ屋はたくさんありますし、カッコいいものや可愛いものなど、それを作れる環境は必ずあります。
特に日本では世界各国から取り寄せた食べ物や素材もたくさんあって、色々な食材を使うことによって新しいものが生み出せたりする楽しみもあったり、やればやるほどスキルもついてきて出来ることも増えてくるのでやりがいのある仕事だと思います。また、人を感動させることが出来る仕事でもあります。
東京観光専門学校では、技術面だけではなく、サービス面の教育にも力を入れており、おもてなしの心を身に付けたパティシエとして活躍いただくための学びの場があります。是非パティシエやカフェのお仕事に興味のある方は一度学校見学にお越しください。
学校法人 東京観光専門学校
カフェサービス学科 学科長 山本 佳成
【経歴】
桜美林大学国際学部卒業。フランス企業パティスリー部門にてキャリアをスタート。都内パティスリー勤務を経て、レコールバンタンにて製菓アシスタント講師、八王子うかい亭のパティシエを勤め、現在は学校法人東京観光学校のカフェサービス学科にて、製菓、カフェフード、デザートの実習をはじめ、メニュー開発や店舗経営などの教育を行う。
【住所】
〒160-0843 東京都新宿区市谷田町3-21
【TEL/FAX】
03-3235-5713 / 03-3235-8226
【HP】