2018/11/16
こんにちは。前回はバリスタの必須スキルその②として『テクニック』についてお話しさせて頂きましたが、今回は『エスプレッソのテイスティング編』です。バリスタに必要な味覚の判断スキルに関してのポイントや練習方法についてご紹介します。
>>前回の記事「バリスタ必須スキルその②『テクニック編(エスプレッソ抽出~ミルクフォーミング)』はこちら
前々回の記事『カッピング』についてご紹介した際に、バリスタが抽出する前にカッピングを行うことで、原料の品質の把握はもちろん、焙煎状態やフレーバーを確認することができ、そのコーヒーをどう抽出するべきかイメージを掴むことができるという事をお伝え致しました。
もちろんカッピングは非常に重要ですが、実はエスプレッソの抽出では抽出中にコーヒーに高い圧力をかけることや、ドース量や抽出時間などの条件がほんの少し変わるだけで最終的なカップの味覚が大きく変化するという繊細な抽出方法のため、抽出の状態によってはカッピングの際には感じなかったフレーバーが前面に出てきたり、印象そのものが全く違って感じたりすることも多々あります。
さらに濃度がカッピングやドリップなどのフィルターコーヒーに比べて何倍も濃いために、慣れないうちは味覚の判別が難しい飲み物だと言えます。
例えばウイスキーでも慣れている人はストレートで楽しむことができますが、慣れていない場合はストレートだと強すぎて味覚が把握しづらいと思います。そこで少し加水することでフレーバーを開かせることができ、より味覚の判断がしやすくなります。
エスプレッソも同様です。まずバリスタとしてエスプレッソの味覚を取れるようになるためには、当然ですが日常的に意識してエスプレッソのテイスティングを行ってみて下さい。
そして慣れないうちは少し加水してテイスティングすることで味覚やフレーバーが分かりやすくなる場合もありますので、ぜひ味覚の判別が難しい場合には、ほんの少しだけ加水してみて頂くのも良いかと思います。
もう一つテイスティングする際のコツがあります。
私たちバリスタ世界大会のジャッジも実際に行なっているのですが、口をつける直前にスプーンでエスプレッソ全体を3回程よくかき混ぜます。
理由は、エスプレッソはクレマと呼ばれる泡の層が表面にあり、クレマとその下にある液体とでは全くテイストが異なるのです。もしエスプレッソを混ぜずに口をつけてしまうと、はじめはクレマの部分しか口の中に入らず、エスプレッソ全体のテイストを把握することができません。
そこで、エスプレッソをよく混ぜることでクレマと液体が混ざり合い、より明確にそのエスプレッソのテイストを感じ取ることができます。
特にバリスタであれば業務中に何度もエスプレッソのテイスティングを行いますが、全てを飲み干していると身体にも負担がかかります。
そこでよく混ぜたエスプレッソを1口ないしは2口程度口をつけて味覚を判別できるように訓練することが非常に重要になってきます。
では実際にエスプレッソのテイスティングを行う際にどういった事を評価する必要があるのでしょうか。
例えばバリスタの世界大会では以下の3つの項目に基づいて評価が行われます。
①『味覚のバランス』
②『フレーバー』
③『触感』
今回は①『味覚のバランス』について解説いたします。
この項目ではコーヒーに通常含まれている3つの味覚である甘味、酸味、苦味のバランスやクオリティを評価します。
例えば、柑橘系の酸味が強く、甘さが全くないエスプレッソでしたら、レモンのような酸っぱい印象を感じるかもしれません。
もちろんコマーシャルコーヒーと比較するとレモンのような酸味がある時点で相対的にはハイクオリティーなのですが、しかしスペシャルティコーヒーの基準としては『酸っぱくてバランスを欠いている』という評価になってしまいます。
私たちも普段生のレモンを何個も食べることはないですよね。
酸味が強すぎると人間の味覚的には単純に心地よくない訳です。
でも同じような柑橘系の酸味があるエスプレッソでも甘さが強く、オレンジや、みかんのような印象を感じるとしたらどうでしょう?
オレンジやみかんでしたら心地よい酸味と甘みのバランスを感じることができ、単純に美味しいと感じると思います。
あくまでも一例ですが、3つの味覚である甘味、酸味、苦味がバランス良く、かつクオリティが伴っているかということを評価・判断できるようにテイスティングの練習を重ねましょう。
バリスタとして、まずはしっかりとエスプレッソの評価ができるようになることが重要で、評価ができないと調整もスムーズに行うことができず、それが最終的にはお客様へご提供する情報の質にも関わってきます。
②『フレーバー』と③『触感』に関しても非常に重要な評価項目です。特に『フレーバー』は実際に店舗でもお客様にご説明することが多い情報ですし、『触感』はボディやテクスチャーなどこちらもエスプレッソならではの特徴の評価となりますので、『味覚のバランス』と合わせて学んでいく必要があります。
より詳細なエスプレッソのテイスティングに関して学びたい方はぜひバリスタトレーニングラボの講習へのご参加をご検討頂ければ幸いです。
今回はエスプレッソのテイスティングに関してお話しさせて頂きました。冒頭でお伝えした通り、慣れないうちは正確なテイスティングが難しいエスプレッソですが、ぜひ時間をかけてテイスティングの経験を積み上げていってほしいと思います。
現在ではシングルオリジン コーヒー(単一農園や単一地域のコーヒー)でエスプレッソを提供している店舗も増えていますので、多様性に満ち溢れた味覚体験をすることができると思います。
ぜひ楽しみながらテイスティングスキルを磨いていきましょう!
ディレクター / バリスタトレーナー 松原 大地
【経歴】
2011年よりバリスタの世界大会であるWorld Barista Championship (ワールド バリスタ チャンピオンシップ)にて審査員を務める。 2013年メルボルン大会ではアジア人初の決勝テクニカルジャッジに、 2015年シアトル大会では日本人初の決勝センサリージャッジに選出される。 その他国内外の数々のバリスタ競技会の審査員として活動をしながらアンリミテッド株式会社を設立。また現在バリスタギルド・オブ・ジャパンの代表としてSCA(Specialty Coffee Association)の国際的な資格プログラムである『COFFEE SKILLS PROGRAM』の運営も行なっている。
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