飲食特化型求人情報サイト食べるんだ
食トレンド

2018/03/19

食品衛生管理基準「HACCP(ハサップ)」の導入で、小規模店舗がピンチ!?

衛生管理をする人

 食べ物の安全に関心が高まる昨今、厚生労働省は全ての飲食店に対して、2020年までに「HACCP(ハサップ)」 による飲食品の衛生管理を義務付けると発表しました。ほとんどの方が聞いたことのないであろう「HACCP」とは、一体どのような管理方法なのでしょうか。飲食店全てに義務づけられることで、何か困ることはあるのでしょうか。今のうちに知っておきたい「HACCP」について、詳しく解説します。

HACCP

衛生管理

 HACCPとは「Hazard-Analysis-Critical-Control-Point」の頭文字をとったもので、日本語に訳すと「危害分析重要管理点」となります。元々はNASAの宇宙食の安全性を確保するため生まれたシステムで、食品の品質の中で異常が生じやすいポイントをあらかじめ決めておき、その部分を徹底的に監視・記録することで危害が発生するのを防止します。

 これまで食品の安全検査は、出来上がった食品を検査していましたが、このやり方では、食品全体の安全について管理することは難しい状態でした。例えば100個のケーキを検査する場合、1個しか検査しないため、調べた1個のケーキに異物が含まれていなくても、他の99個に入っていないとは限らないので、完全に問題がないとは言えませんでした。しかしHACCPを用いれば、食品を作る各工程で異常がないかをチェックできるため、これまで以上に食品の安全確保、リスク管理が容易にできるようになります。

HACCPの導入手順

チェック

 HACCPを行うには、組織全体で適切なルールの元、実施する必要があります。そのため導入した企業は、企業方針としてHACCP専任チームを編成して、手順通りに進めなくてはいけません。HACCPには、7つの基本原則と、12の手順があります。12個の手順のうち、最初の15までは、7原則を進めるための準備としての手順になっています。

手順1:HACCPのチーム編成

 企業や店舗組織内の各担当者を集め、HACCPを運営管理するチームをつくる。

手順2:製品説明書の作成

 原材料や特性などを記載し、危害要因を分析するための基礎資料を作成します。レシピや仕様書など、どんな食品が作られるかの内容が十分わかるような書き方をすること。

手順3:意図する用途及び対象となる消費者の確認

 加熱して食べるのか生で食すかなど、その製品の使用方法や、製品を提供する対象となる消費者について、製品説明書などに盛りこんで記載する。

手順4:製造工程一覧図の作成

 材料の受け取りから、出荷または食事として提供するまでの一連の流れを作成する。

手順5:製造工程一覧図の現場確認

 手順4の製造工程図を元に、現場での人やモノの動きにズレがないか確認し、必要に応じて修正する。

手順6(原則1):危害要因分析の実施(ハザード)

 食品製造の工程や原料に対し、危害の要因になる可能性のあるものを洗い出し、管理方法を並べていく。

手順7(原則2):重要管理点(CCP)の決定

 考えられる要因の中でも重要な工程を決める。(加熱殺菌や金属探知など)

手順8(原則3):管理基準(CL)の設定

 手順7で決めたCCPを、適切に管理するため、温度や時間などの基準を定める。

手順9(原則4):モニタリング方法の設定

 CCPが正しく管理出来ているか、適切なタイミングでチェックする。管理方法や記録方法は、誰でも出来るようシンプルなものにするなど、チェック方法を決めておく。

手順10(原則5):改善措置の設定

 チェックをしていくうえで、もし異常があった場合に、どのように対処するかを決める。

手順11(原則6):検証方法の設定

 HACCPが機能しているかを確認するための手順、頻度、担当者を決める

手順12(原則7):記録と保存方法の設定

 HACCPの実施記録を作り、その証拠を保存するための方法を決める。記録を残すことで、問題の原因追究の参考とする。

引用:公益社団法人日本食品衛生協会「HACCP導入のための7原則12手順」

店の規模に合わせた運用を

 こうしたHACCPでの管理方法は、企業やチェーン展開しているようなお店であれば、対応する人数も確保できるかもしれません。しかし規模がそれほど大きくない中小規模の店舗や企業では、7原則12手順をそのまま実施することは困難な場合もあるでしょう。そこで厚生労働省では、HACCPについて2つの基準を設定するとしています。

・「基準A」…HACCPの7原則に基づく衛生管理

・「基準B」…HACCPの7原則の、弾力的な運用を可能とする考え方に基づく衛生管理

 基準Bの「弾力的な運用」とは、12手順の中の「危害の要因分析」「管理記録のモニタリング頻度」「記録作成・保管」が、緩和措置の対象となる予定です。例えば『食材を加熱して調理する場合、目視での確認でも許可する』や『業種ごとに作成される手引きをもとに日誌を作れば、それを記録・保管として良い』などが、これにあたります。

HACCP認証を受けるにはどうすればいい?

チェックOK

 ではHACCP認証を受けるにはどうしたらいいのでしょうか。HACCP認証は、業種業態によって種類が細分化されているため、認証取得を目指す場合は協会・団体等に確認を取ることをお勧めします。まずは農林水産省のホームページに記載の、HACCP支援法の指定認定機関に登録されている団体に問い合わせてみましょう。HACCP認証機関はいくつもあるため、お店が扱っている飲食物や規模に合わせて、適切な団体を選びましょう。

総合衛生管理製造過程(マル総)

 厚生労働省によるHACCP認証です。対象となるのは、容器包装詰加圧加熱殺菌食品(缶詰、レトルト食品など)、魚肉練り製品(かまぼこ、はんぺんなど)、乳・乳製品、清涼飲料水、食肉製品などです。

業界団体認証

 業界ごとで、独自に認証を行なっている団体があります。HACCP認証の範囲もその業界、業種に限られます。

例:(公社)日本炊飯協会「炊飯HACCP認定事業」(一社)大日本水産会「水産食品加工施設HACCP認定制度」(一社)日本冷凍食品協会「冷凍食品認定制度」など

地方自治体によるHACCP認証(地域HACCP)

 各自治体でも、独自にHACCP認証を行なっています。対象となる製品は、自治体によって違いがあり、中小企業でも認可を取りやすいのが特徴です。

例:北海道HACCP自主衛生管理認証制度大阪版食の安全安心認証制度(大阪府)熊本市食品自主衛生管理評価事業(熊本市版HACCPなど

参考:農林水産省 指定認定機関(高度化基準・認定業務規程)一覧

HACCPを導入するメリット

衛生管理をする女性

組織単位で衛生管理の意識が向上する

 HACCP導入時には、水まわりや廃棄物の処理、設備の衛生管理など、職場の衛生管理について学ぶことが必要です。導入時にチーム全員で、衛生の維持について繰り返し確認するため、職場全体で衛生管理に対する理解度が上がるというのは嬉しい効果です。

不具合の原因究明、及び対処速度が早くなる

 HACCPでは、危害の発生しやすい箇所と原因をもとに、作業工程を監視・記録します。これにより危害が発生した場合の、原因究明がすぐにでき、素早い対処が可能になります。万が一、危害の起こった工程には、その結果がフィードバックされ、より強固な衛生維持の基準になります。

お客様に安全な食品をアピールできる

 HACCPに基づいて管理・分析することで、化学薬品や細菌、食中毒の原因となる物質などを、食品製造過程で発見・排除できるので、食品の安全度が増します。つまりお客さまから見れば、HACCP認証を受けた店のものは、安心して食べられるということになります。事実、アメリカではHACCPを義務付けてから、年間の食中毒の発生件数が20%減少したのだとか。

HACCPを導入するデメリット

デメリット

事前準備に時間がかかる

 HACCPをより効果的に運用する前段階として「一般的衛生管理プログラム」を導入する必要があります。排水や廃棄物の扱いなど、食品と作業場の衛生環境を守るプログラムで、業務を根本から見直す必要があるため、始まるまでに時間を要してしまいます。

参考URL:一般財団法人 食品産業センター「HACCP実践のための一般的衛生管理マニュアル(2000年版)」

初期投資にお金がかかる

 HACCPを導入するにあたって、検査費や検査記録用の機械、社員教育の準備などを、すべて店で用意する必要があります。これは小規模店舗には、痛い出費になってしまいます。ただし資本金3億円以下、または従業員300名以下の中小企業で、指定認定機関の認証を受けることができれば、株式会社日本政策金融公庫による長期低利融資を受けることができます。

参考:農林水産省 指定認定機関(高度化基準・認定業務規程)一覧

人手不足の職場では運用が厳しい

 HACCPチームは職場全体で運用するものですから、少人数で回している職場は人手不足の中どう活動していくかも悩ましいポイントです。記録や管理、監視の各工程において可能なところは自動化させる、フォーマットを準備するなどして、従業員の負担は少しでも減らしたいところです。

まとめ

 アメリカやEU諸国、アジアで義務化が進む「HACCP」についてご紹介しました。HACCPは、国連も推奨する衛生管理システムです。年々観光客が増えており、2020年に東京オリンピックを控える日本において、インバウンドで海外の方が日本を訪れる際には、HACCP認証を受けているとわかれば、安心してお店を利用してもらうことができます。

 このように危害が発生しやすいポイントをおさえて、管理するHACCPのシステムは、設置するまでには手間とお金がかかります。ですがマニュアル化することによって、従業員の誰でも衛生管理がしやすいため、お客様から信頼あるお店になることができます。

 飲食業界は人手不足が続いており、HACCPチームを作り、業務を見直して監視・記録していくとなると、実現が厳しいという店もあるでしょう。まずは運用が簡易な『基準B』を満たすことを目標に、できるところから進めてみてはいかがでしょうか。

関連タグ

関連コンテンツ

〈今日の食べるんだ!〉
求人数 3,564
新着

1