2018/10/01
こんにちは。前回はバリスタの必須スキル その1として『カッピング』について触れましたが、今回は『テクニック編』と題し、少し専門的な内容になりますが技術面にフォーカスしてお伝えさせて頂きます。
>>前回の記事「バリスタ必須スキルその①『カッピング』について」はこちら
まずはバリスタがエスプレッソを抽出する際のテクニックを具体的に確認していきましょう。主な手順と必要なテクニックは下記の通りです。
①ドーシング → ②レベリング → ③タンピング
例えばお医者さんがお薬を投与する事を『ドース』、またその量を『ドース量』といいますが、バリスタの専門用語では挽いたコーヒーの粉をバスケットに詰めていく作業のことをドーシング、そしてバスケットに詰めたコーヒーの粉量をドース量といいます。
ここでは、まずは正確なコーヒーの量を計量するスキルが求められます。最近は様々な産地の単一農園や単一地域のコーヒーをシングルオリジンとしてエスプレッソでも提供しているカフェやコーヒーショップが増えてきており、トレンドとなっております。ブレンドと違い、それぞれのコーヒーの個性をお客様に楽しんで頂くためには当然コーヒーによって適切なレシピも変わってきます。ですので、バリスタとして使用しているコーヒーの特徴を把握し、適切な味覚になるようコーヒーの粉量を決めていくことが必要です。
しかし、せっかくベストなコーヒーの粉量が決まっているにも関わらずドーシングの度に大幅に粉の量が違ってしまうと、安定した味覚の再現が難しくなります。現在はドーシング(グラインド)の時間を設定できるグラインダーもありますし、ドース量自体を計量してくれる最新のグラインダーも市場に出始めています。
ただ、いずれのグラインダーもやはり誤差が発生することがありますので、バリスタ自身がドーシング量のブレを感じて修正する必要があるため、基礎スキルとしてドーシングの練習は欠かせません。
次はレベリングですが、『レベル』とは英語で『ならす、平らにする』という意味です。通常は指を使って山状になっているドーシング直後のコーヒーの粉をならし均等な密度に整えていきます。レベリングも初めは均等な密度にするのが非常に難しいので、ぜひ練習を重ねてほしい重要なテクニックです。
『タンプ』とは英語で『詰め固める』という意味です。タンピングはコーヒーの粉を押し固める事によって、粉同士の隙間をなくしお湯をゆっくりと通過させるために必要な作業です。ただ闇雲に押し固めれば良いわけではなく、毎回一貫した圧力でタンピングする事と、とにかく水平にタンピングすることが重要です。自分が何キロ程度の力でタンピングを行なっているのか確認したい場合は体重計をテーブルに乗せタンピングの動作を行うと確認ができます。
また、水平にタンピングを行うこと自体が初めは意外と難しいので、店舗ではバリスタ同士でお互いのタンピングが水平になっているかを確認をすることをお勧めします。
ちなみに上記の作業工程以外にもフラッシングやフィルターバスケットの清掃、ポルタフィルターの清掃、グループへ挿入直後に抽出開始するなど、抽出における様々なポイントがありますが、まずはこの3つのテクニックを向上していく必要があります。
バリスタトレーニングラボでは毎月『テクニカルプログラム』という講習を行っていますが、この講習の中では先ほどご説明したエスプレッソ抽出の手順を、他の受講者に確認してもらいながら行います。
どうしても自分一人だと適切なテクニックで各作業が出来ているか、コーヒー粉の無駄こぼしがどれくらいだったか、バスケット内に均等にコーヒーの分配(ディストリビューション)ができているか、タンピングが水平にできているかなど客観的に確認することが難しいため、お互い確認し合いながら手順を行うことで精度の高いフィードバックを得ることができます。
日本では店舗で受けるオーダーとしてはエスプレッソよりも圧倒的にカフェラテやカプチーノなどのいわゆるミルクビバレッジの方が多いかと思いますので、ミルクのフォーミングや注ぎのテクニックもエスプレッソ抽出と同様にとても重要です。
最初はラテやカプチーノなどメニューによって泡立てる量をコントロールすることや、またキメ細いフォームを作成できるようになるまでかなりの時間を要します。
練習の際にはピッチャーに毎回目分量でミルクを準備するのではなく、まずは使用するカップに対しての必要なミルクの量を割り出し、スケールを使用してミルクを毎回計量してフォーミング練習を行ってみてください。そうすることで泡立ての量が適切かどうか判断がつきやすくなります。
さらに次のステップではカップに注いだミルクの量もスケールで計量するものとても良い練習になります。同じ出来上がり量に見えてもフォームが多いとその分ミルクの液体が少なく(軽く)なり、逆にフォームが薄ければミルクの重量が重くなるはずです。とにかくフォームドミルクの品質が安定しなければ、注ぎやラテアートのテクニックも上達しませんので、根気強く、継続的に取り組んでみてください。
バリスタトレーンングラボでは『ミルクフォーミング&ラテアート』というプログラムでフォーミングのテクニックを学ぶことができます。講師がラテアートの注ぎ方などを確認し、良かった点や改善点などをその場でフィードバックしていきますので、効率よく上達して頂けます。ぜひ興味のある方はご参加頂ければと思います。
今回はバリスタのテクニックに関してお話しさせて頂きました。特に素晴らしいミルクビバレッジには、エスプレッソの抽出からフォーミング、ラテアートまでバリスタのテクニックが全て詰め込まれています。だからこそご家庭ではなかなか飲めないドリンクだと言えると思います。
ぜひプロのバリスタのテクニックの集大成である素晴らしいミルクビバレッジを沢山のお客様に飲みに来て頂けるよう頑張りましょう!
ディレクター / バリスタトレーナー 松原 大地
【経歴】
2011年よりバリスタの世界大会であるWorld Barista Championship (ワールド バリスタ チャンピオンシップ)にて審査員を務める。 2013年メルボルン大会ではアジア人初の決勝テクニカルジャッジに、 2015年シアトル大会では日本人初の決勝センサリージャッジに選出される。 その他国内外の数々のバリスタ競技会の審査員として活動をしながらアンリミテッド株式会社を設立。また現在バリスタギルド・オブ・ジャパンの代表としてSCA(Specialty Coffee Association)の国際的な資格プログラムである『COFFEE SKILLS PROGRAM』の運営も行なっている。
【住所】
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